第15回 「消費商材」は体験とセットで

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国13店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第15回 「消費商材」は体験とセットで

安田
世の中には「資産価値のあるもの」と、「単なる消費」とがあるじゃないですか。倉橋さんが商品を売る立場だったとすると、どちらが売りやすいですか?

倉橋

それは消費の方が圧倒的に売りやすいですね。

安田
へぇ、そうなんですか。資産価値のあるものの方が売りやすい気がしてました。

倉橋
僕にとっては、という注釈付きですけどね。消費っていうのは人の心が楽しくなるとかハッピーになるとか、そういうものじゃないですか。喜んでいただくことに対して対価をもらう方が、僕はやりやすいかな。
安田
そうなんですね。とはいえ日本人は資産価値のあるものが好きで、何十年ものローンを組んで一軒家を買ったりするじゃないですか。保険も掛け捨てじゃなくて積み立てが大好きで。

倉橋
つまり手元に残ったり返ってくるのが好きなんですよね。
安田
そうそう。だから消費系の商品って、日本では売るのがすごく難しそうな気もするんですけど。

倉橋
物を売るビジネスには2通りあって。1つは恐怖を煽って不安を解消する方法で、「こんなことが起こったら大変ですよ」っていう営業をかけるもの。
安田

なるほど。不安を安心に変えて、それでお金をもらうと。


倉橋
ええ。もう1つが「こういう楽しい経験ができますよ」というビジネス。僕はこっちの方が好きなんです。不安を煽るビジネスはあまり得意でないというか。
安田
その2つのパターンは「投資」と「消費」とも言い換えられると思うんですけど。実際人間が生きている間にどちらにたくさんお金と時間をかけるかというと、完全に消費ではありますよね。

倉橋
病院やクリニックも実は不安を煽るビジネスじゃないですか。不安だから行くわけで。そこもけっこうお金を使いますよね。
安田
使いますけど、どちらに使うかって言われたら普通の人は圧倒的に消えてなくなる方が多い気がしますけどね。逆にお金持ちほど投資を意識するような。

倉橋
まぁ、たくさん持っているものをなくしたくないですもんね。
安田
ちなみに売り方もそれぞれ全然違うわけですよね。

倉橋
全然違いますね。消費はどちらかというとポジティブな営業の仕方をすると思います。「この瞬間を楽しく暮らしませんか」とか、「こんな美味しいものがありますよ」とか。
安田
「私たちのお店はこれだけハッピーなことをお客様に提供できます」ということですね。

倉橋

そうですそうです。それに対して投資の方はコマーシャルからネガティブなんですよね。「あなたは困っていませんか?」っていうところからスタートするわけで。

安田
確かにそうですね。ちなみに今は日本がどんどん貧乏になっていると言われているじゃないですか。そんな状況でも消費というか、「楽しむ」ことにお金を使うんですかね。

倉橋
使うと思いますね。不安で面白くなくて先行き不透明なときこそ、人間ってギャンブルをしたり美味しいものを食べたりしたくなるんです。締め付けが強ければ強いほど、そこから逃げたいっていう気持ちが出てくるわけで。
安田
ははぁ、なるほど。不安に対処しているだけでは人間は生きていけないと。

倉橋

それはとてもじゃないですけど生きていけないですよね。全然楽しくないじゃないですか(笑)。

安田
そうですよね(笑)。余裕がなくても、やっぱりどこかに楽しみは必要だと。

倉橋

ええ。それが人間なんだと思いますね。

安田

なるほど。ちなみに倉橋さんが投資じゃなく消費に商売をシフトしているのは、そっちの方が得意だから、という理由だけなんですか?


倉橋

ええ、基本的にはそれが一番の理由です。楽しい方に時間を提供する仕事の方が得意というか。家を売ったり、保険を売ったりとか大変だな〜といつも思ってます。

安田
なるほど。ちなみに、消えてなくなっちゃうものにお金を使ってもらう「コツ」はありますか。

倉橋
やっぱりシンプルに「楽しんでもらうこと」ですかね。そしてそれをどれだけ伝えられるかだと思います。
安田
確かに、やってみないと楽しいかどうかわからないですもんね。
倉橋
そうなんです。だからまず店に来てもらう。来てもらって初めて感じてもらえるので。そこは僕も毎日考えているところです。
安田
そうなんですね。例えばヨーロッパの有名ブランドも、都市部の一等地にバーンと大きな店を出していますよね。経営者目線では「この家賃も商品の値段に反映されているんだろうな」と思ってしまいますが、敷居の高さやドアボーイの人件費もひっくるめて「消費」を楽しんでいるとも言えますよね。

倉橋
そうですね。それも楽しい時間の使い方ですからね。特別扱いをされたりとか。
安田
一方で、「物さえ手に入れば一緒」っていう人は、店の立地や接客に関係なく、安く売っている店で買うわけで。それによってもまた売り方が違うんでしょうね。
倉橋
物だけを売るのか、体験も付けて売るのかというのが大きな違いだと思いますね。
安田
なるほど。ということは消費してもらおうと思うと、「物」から「体験」にシフトしていった方がいいってことですかね。
倉橋
仰るとおりです。「体験」はすごく大事だと思いますね。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に13店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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