第13回 仕事は量なのか質なのか

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第13回 仕事は量なのか質なのか

安田

ぜひ西崎さんに意見を聞きたい話があって。それはいわゆる「仕事は量なのか質なのか」についてなんですけど。


西崎

はいはい。よく議論されてる話ですよね。

安田

最近いろいろな経営者さんと話すんですが、「若い頃はとにかく量をやるべきだ」という人と、「盲目的に量をやったって成功するわけない、重要なのは質だ」という人に分かれるんですよ。西崎さんはどっち派ですか?


西崎

僕自身の実体験で言えば、完全に前者でしたけどね(笑)。

安田

まぁそうですよね(笑)。時代的にも業界的にも、「24時間働けますか?」の世界でしたから。


西崎

でもまぁ、そういう部分を差し引くとしても、特に若い頃って「量をやるしかない」って感じじゃないですかね。

安田

というと?


西崎

たとえば新卒入社だと、経験どころか知識もない、そもそも仕事の進め方もわからない、という状態ですよね。じゃあ何ならあるのかって、それは時間だけなわけで。

安田

なるほど。ありあまる時間を使ってとにかく量をこなすしかないと。


西崎

とくに社会人スタート間もない場合はそうでしょうね。ただその一方で、先ほど仰っていた「盲目的に量やるだけじゃダメ」って意見にも共感するんですよ。結果につながらないことをひたすら量やっていても意味がないので。

安田

そうなんですよね。だってもし仕事のクオリティが「量」だけに依存するなら、営業20年目とかの人が一番売れてなきゃおかしいですから。


西崎

確かに(笑)。でも実際はそんなことにはなりませんもんね。

安田

だから、私が思ったのは「量」というより「密度」なんじゃないかなと。ダラダラ意味のないことをやるんじゃなく、どれだけ密度濃くやれるか。


西崎

ははぁ、確かにそうかもしれません。

安田

ときに西崎さんご自身は、若い頃どんな働き方をされていたんです? 上司に言われるままひたすら量をやっていたんですか? それとも最初から「密度濃く」できていた?


西崎

そうですね、それで言うと「質を先に求めてしまって失敗したタイプ」でした(笑)。というのも、入社して最初にやらされるのって、いわゆるテレアポじゃないですか。僕、あれが嫌で嫌で(笑)。

安田

ああ、わかります。私も嫌いです(笑)。


西崎

だから周りの皆が1時間かけて100社のリストを作るところ、僕は一社ごとの下調べをしながら、1時間で5社のリストを作ったりして。

安田

へぇ。つまり、指示されたのとは違うやり方をこっそり試していた。


西崎

そういうことです(笑)。リストだけじゃなく、トークスクリプトも自作して、こう言われたらこう返そう、みたいなのを緻密に作って。

安田

いやぁ、すごいですね。そんなことできたら、周りよりよっぽど売れたんじゃないですか?


西崎

いやそれが、まったく成果が出なかったですね(笑)。

安田

えっ、そうなんですか?


西崎

今思えば、当時の未熟な僕が作ったリストやトークスクリプトなんて、そりゃ通用しないよなって思いますけど(笑)。それでまぁ、「自分のやり方を試すのは時期尚早だったな」と納得しまして。

安田

なるほどね。それで心を入れ替えて、指示通りやるように(笑)。


西崎

そうなんですけど、やっぱり早く成果を出したいじゃないですか。だからまず、周囲を観察して一番アポが取れている人を見つけるわけです。

安田

なるほど(笑)。確かにテレアポって、8時間やってゼロって人もいれば、1時間で2件も3件も取れちゃう人もいますもんね。


西崎

そうそう。で、一番取れているのが先輩だったので、本人の了承を得て電話の声を録音させてもらって。

安田

へえ!


西崎

で、それを徹底的に真似るんです。言葉遣いとか話の流れとか。

安田

なるほど。それで成果は出るようになったんですか?


西崎

いきなりガラッと変わったわけじゃないですが、少しずつですね。他にも「誰より電話番号を早く打つスキル」みたいなものも習得しながら(笑)。そういえば安田さんご自身も営業出身ですよね。

安田

ええ、だからやってましたよ、テレアポ。ただ、割とすぐに気付いちゃったんですよ。テレアポの矛盾に。


西崎

矛盾……といいますと?

安田

だってね、テレアポで成果を出す人って、要は躊躇せずアポ取りができる人でしょう? お客さんに怒られてガチャンと切られても、あんまり傷つかない人というか。


西崎

ああ、そうですよね。そんなのイチイチ落ち込んでいたら電話できないですから。

安田

でしょ? でもね、デキる営業っていうのは、顧客心理を理解して、適切な提案ができる人ですよ。つまり、相手の気持ちが理解できないそういう人は、デキる営業マンにはなり得ないんです。


西崎

笑。確かにそうだ。

安田

それですっかりテレアポが嫌いになりましたね(笑)。まぁそれはさておき、冒頭の「質か量か」の話で言うと、現在の西崎さんはどうですか? トゥモローゲートに新人が入ってきたら、やっぱり「最初はとにかく量だ」と言うんですか。


西崎

うーん、まあ、最初の最初は言うかもしれませんね。でもある程度知識がついてきたら、本人のスタイルに任せてます。

安田

なるほど。ライターさんやデザイナーさんなどのクリエイティブ職についてはどうですか? とにかく量を作れというのか、少なくてもいいから質の高いものを作れというのか。


西崎

そうですねぇ。まず、営業にしろクリエイティブにしろ、「実際にやってみないとスキルは上がらない」というのが大前提ですよね。ただそれでも、人によってスタイルは違ってていいかなと。

安田

ふーむ。そこは統一されていなくていいと。


西崎

ええ。同じやり方を強制する気はないですね。すごく頭が良い人なら、いきなり質を追求してもうまくいっちゃうかもしれないし。まぁ、とはいえ、先ほど言ったように「実際にやってみる」を積み重ねないとスキルは上がりませんから。

安田

なるほどね。でもどうですか、西崎さんも日頃からたくさんの経営者さんに会っていると思うんですが、その中で「ひたすら量をやってきただけ」で成功している人っていました?


西崎

うーん、それはいない気がしますね。やっぱり皆さん、自分なりに工夫したり試行錯誤したりしながら、成功されている気がします。

安田

そうなんですよ。つまり皆さん、どこかのタイミングで「質」にシフトしている。なのにそれをすっかり忘れて、従業員には「とにかく量をやれ!」と言ってしまう(笑)。


西崎

笑。まぁ、まずはとにかく体を動かして経験を積んでいき、それが十分に積み上がったらやり方を変えていく、ということでしょうね。経験っていう材料が足りてないうちは、ひたすら体を動かすと。

安田

なるほどね。そうやって少しずつ量と質のバランスを変えていくと。


西崎

まさにそういうことです。例えば入社時点は量と質が9010でいい。でも経験という材料を得ることでやがて5050になり、最終的には1090にしていくみたいな。

安田

わかりやすいです。とはいえ今の例で言っても、新人時代も10%くらいは頭を使いなさいよ、ということですね(笑)。


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数18万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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