第9回 初挑戦のクラファンが1000%達成

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第9回 初挑戦のクラファンが1000%達成

安田

先日も話していた西崎さんの著書のクラウドファンディングが終了したとのことで。


西崎

その説はご支援ありがとうございました。嬉しかったです。

安田

いえいえ。最終的にどれくらいの達成だったんですか? 目標額は早々にクリアされていましたけど。


西崎

1000%以上いきましたね。(編注:最終的には支援者462人、2246万7875円が集まった)

安田

すごいなぁ。そういえば最後の方は1000%達成にこだわってましたよね。ああいうアピールも狙ってやっていたんですか?


西崎

仰るとおりで、クラウドファンディングの仕組み上、ああいうわかりやすい目標を掲げた方がご支援いただけやすいんです。実際僕らは4回か5回くらいネクストゴールを設定してます。

安田

ははぁ。つまり1000%達成自体が目標ではなく、少しでも支援者を増やすための工夫だったと。


西崎

もちろん「1000%達成したい!」っていう想いはありましたけどね。「クラファンで1000%達成」という実績ができれば、今後もいろいろなところでプラスに働くでしょうし。

安田

なるほどなぁ。で、今日はそのクラファンのノウハウをですね、こっそり教えてもらおうと企んでまして(笑)。


西崎

なるほど(笑)。全然いいですよ。

安田

今回1000%達成って話を聞いて、西崎さんはきっと何度もクラファンを経験して、ノウハウをちゃんと持っているんだなと思ったんです。でもお聞きしたらなんと初めてだと。


西崎

ええ、初めてのクラファンでした。

安田

なんで初めてで1000%達成なんてすごい結果を出せたんですか? 何かズルをしたんですか?


西崎

いやいや、してません(笑)。というか、これは僕の感覚ですけど、初めての方がむしろ一番資金を集めやすいと思いますよ。

安田

え、そうなんですか? 二度目三度目の方が、仕組みがわかってる分うまくいきそうですけど。


西崎

それがそうでもないんですよね。ですから例えば3つクラファンしたい企画があるなら、一番成功させたいものを一発目に持ってきた方がいいと思いますね。

安田

へぇ~、なんでそうなるんですか? 私はクラファン未経験者なのでまったくわかりません。


西崎

理由はいくつかあるんです。まず1つは、基本的にクラファンで支援下さる方って、XとかYouTubeとかで僕らを知ってくれているファンの方なわけです。

安田

ああ、なるほど。つまりクラファンサイトでたまたま見た人じゃないと。


西崎

仰るとおりです。なのでクラファンの告知はDMとかLINEを使って行うことになるんですが、最初は新鮮な気分で受け取ってくれるわけです。

安田

「お、トゥモローゲートがまた変なことを始めたぞ」ってことですね。


西崎

ええ。でもそれが2回、3回と続いたら、やっぱり新鮮さは薄れちゃいますよね。たとえば今日第2回目のクラファンを告知したとしても、1回目ほどのインパクトはないわけですよ。

安田

ああ、なるほど。「またか」となってしまうわけだ。


西崎

そういうことなんです。だから1回目より2回目の方が恐らく反応率は下がる。さらに言えば、1回目でご支援してくれた方が、2回目で1回目以上の額を支援してくれることはないと思うんです。そういう意味でも、だからやっぱり一発目が一番効果を出しやすいんじゃないかと。

安田

確かに言われてみればそうかもしれない。ということは、仮に2回目3回目をやるとしても、ある程度の期間を空けることになりますか。


西崎

そうですね。この1年以内にやる気はまったくないですね。

安田

なるほどなぁ。ちなみに西崎さんはクラファンの仕組みをどういうものだと捉えているんですか?


西崎

僕は「自分の信用貯金を使う」ものだと思っていて。まぁ、これを僕自身が言うのもちょっとおこがましいんですけど、XYouTubeでいろいろ発信する中で、「勉強になった」とか「仕事の成果に繋がった」という人がいるとしますよね。

安田

それはたくさんいるでしょうね。具体的なノウハウも発信されているし。


西崎

そういう方がある意味の「お礼」として、今回支援してくださったんじゃいかと思っているんです。

安田

ははぁ、なるほど。でも「貯金」と言うからには、使えば減ってしまうんじゃ?


西崎

まさに仰るとおりで、僕は今回のクラファンでその貯金を使い切ってしまったんですよ。だから二度目のクラファンまでに、それをまたイチから貯めていかなきゃならない(笑)。

安田

なるほど(笑)。でもそもそもSNSの世界が、そういうところありますよね。ギブアンドテイクで言うと、まずこっちがギブしなければいけない。


西崎

ええ、そうだと思いますね。ギブした先にテイクがある……かもしれない、という。

安田

実際どうですか? 体感として、自分が行ったギブに対してどれくらいリターンがあるんでしょう。


西崎

そこの数値化はなかなか難しいですけどね。でも今回のクラファンの結果については、とてもありがたいなと思っています。もともとは1000万円集まればいいね、くらいの感覚だったので。

安田

ほう、ということは、当初から1000万円は見込んでいたと。


西崎

もちろんあくまで達成目標として、ですけどね。ただ、周りの方のクラファン企画を見ながら、自分なりに事前シミュレーションはしていたんですよね。これくらいのフォロワー数で、これくらいエンゲージメントがあったら、いくらくらい支援されるのか、というのを分析して。

安田

へえ~、それで現在のトゥモローゲートならラクラク1000万円は集まるだろうと(笑)。


西崎

そんなそんな(笑)、「それくらい集められるよう頑張ろう」という感じでした。

安田

ちなみにここまでお話聞いていると、クラファンで成功するならやっぱりある程度のファンがいないとダメそうですね。


西崎

ダメということはないと思いますが、かなり重要なファクターであることは間違いないです。クラファンで「何をやるか」はもちろん重要なんですが、「誰がやるのか」もすごく大事で。

安田

そういうことですよね。でも、それは必ずしも「SNSのフォロワーが多い人」でなくてもいいわけですよね。例えばときどき「店が潰れそうなんです!助けて下さい!」みたいなクラファンがありますけど、実店舗のファンがいれば支援してもらえそうだし。


西崎

そうですね。もしくは「時事性」があるか、ですね。たとえば今回の能登半島地震とかですよね。地震で倒壊してしまった温泉宿がクラファンをしたら、全国から支援が集まった。

安田

ははぁ、なるほど。つまり「誰がやるか」と「タイミング」が重要だと。他には何がありますか? リターンの内容なんかも大事そうですけど。


西崎

もちろんそこも大事ですが、やっぱり「何のためにクラウドファンディングするのか」というところじゃないですかね。

安田

なるほど。今回の西崎さんで言えば、「全国の学校に本を届けたい」っていうことですよね。そういう想いが重要だと。


西崎

ええ。やっぱり公益性がある方が応援されやすいですから。そういう意味では今回の我々の企画は「クラファン向き」だったなと。

安田

ふーむ。もしかして、そこから逆算して本の内容を考えたんですか?


西崎

ああ、そうですね。完全に逆算ですね。

安田

やっぱり! いや、すごいなぁ。普通に本を書いても広がらない、広がらなければ意味がないと。


西崎

それもありますし、あとは先日もお伝えしましたけど、あんまり本を書く自信がなかったんですよ。すごい経営者さんたちが既にいっぱい本を書かれている中で、全然勝てる気がしなくて(笑)。だからそもそも土俵を変えないと勝負にならんなと。

安田

なるほどなぁ。ちなみにね、今回のクラファンって、ある意味本の予約注文みたいなものじゃないですか。そうなると出版社はすごく嬉しいですよね。何部売れるのか先に分かっちゃうわけですから。


西崎

そうですね。

安田

でもそのリターンについては、西崎さんやトゥモローゲートの社員さんが対応するわけでしょう? 自分たちの時間を使って、本をせっせと納品しなければならない。


西崎

そうなりますね(笑)。

安田

つまり西崎さんたちは出版社の利益のために働かなきゃならない(笑)。そこにモヤモヤしたりはしないんですか?


西崎

いやいや、しません(笑)。社会に対してこういうアクションをさせてもらうこと自体に価値があると思ってますし、単純に僕自身がやりたいことでもあるので。それに、「こんな取り組みをしてる会社、いいじゃん」という風に興味を持ってもらえるかもしれませんし。

安田

なるほど。どこを突っ込んでも計算済みなんですね(笑)。さすがです。


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数18万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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