第137回 「楽しそうか」「楽そうか」の選択

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

商売が上手くいっているオーナーさん達に共通して感じることがあります。
それは「仕事が楽しそうである」ということ。

そんな楽しそうなオーナーさん達を見ていると、どうしても比べたくなるのです。
「開業した頃の自分はどうだったのか?」と。

自分の顔を客観的に見ることはできないので、周りから見たらどんな表情で仕事をしていたのかは分かりません。ただ今、私が一緒に仕事をしているオーナーさん達ほど仕事を楽しめていたのかと考えると、とてもそうは思えないのです。

仕事を楽しめるオーナーと仕事を楽しめないオーナー。

この違いはどこから来ているのでしょうか。


仕事を楽しんでいるオーナーと仕事を楽しめなかった当時の自分を見比べて、すぐに気がつく違い。それは「努力する場所」の違い。

当時の私は「儲からない価格で我慢する努力」をしていた一方で、仕事を楽しんでいるオーナーは「儲かる価格で売る努力」をしているのです。

「儲からない価格で我慢する努力」と「儲かる価格で売る努力」。

この2つの努力を見比べた時、どちらの努力が「楽しそう」かと考えると、後者の方が楽しそうに思えます。なぜなら前者はひたすら我慢をしているだけなのに対して、後者は試行錯誤を重ねていく過程で新しい気づきや自分なりの正解に近づいていける実感を得られると思うからです。

では、この2つの努力を見比べた時、どちらの努力が「楽そう」かと考えると、前者の方が楽そうに思えます。なぜなら前者は儲からない価格に設定しただけで、何も試していないのに対して、後者は頭を使って考える必要があるだけでなく、それを実行に移す行動力も必要になるからです。

つまり、「儲からない価格で我慢する努力」は「楽そう」な選択であり、「儲かる価格で売る努力」は「楽しそう」な選択であるということ。

私はここまで「我慢する努力」と書いてきました。

当時の私が努力しているつもりだったのは確かですが、今から思えば単純に「楽そう」を選んでいただけでしかなく、努力の意味を辞書通り「心や身体を使ってつとめること」で判断するならば、私は全く努力をしていなかったと言える訳です。

何も考えず、ただメニューに安い価格を書き出して毎日お店でお客さんを待ち続ける。
今から思えば、これほど楽な商売はないでしょう。

「楽そう」な商売しかしていないにも関わらず、そんな選択を努力と勘違いしたお店が繁盛するはずもなく、また楽をして試行錯誤をしない商売を選択することは、同時に「楽しそう」な商売からも遠ざかる選択であったのだと、仕事を楽しんでいるオーナーさん達を見ていて改めて思うのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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