第46回「最低賃金が低すぎた?」

この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第46回「最低賃金が低すぎた?」

安田

最低賃金が上がりましたよね。

久野

はい。東京と神奈川が1000円超えました。

安田

巷の意見は二つに分かれてまして。「韓国みたいに雇用がなくなる」って意見と「イギリスはそれで成功した」みたいな意見があるんですけど。

久野

はい。見てると半々ぐらいですね。

安田

雇用がなくなるという人は、「法の抜け道をくぐって、海外研修生をうまく使って、仕事がそっちに流れる」と言ってます。

久野

言ってますね(笑)

安田

そんなこと出来るんですか?プロの目から見て。

久野

まず韓国みたいにはならないと思います。

安田

ほう。

久野

みんなが一番恐れてるのは「賃金が上がることによって会社がつぶれる」ってことですよね。

安田

そうですね。高い時給でやっていけなくなって潰れるんじゃないかと。

久野

でもたとえば岐阜県とか愛知県って、有効求人倍率がいま1.8を超えてるんですね。

安田

180社の募集に対して100人しか人がいない状況ってことですね。

久野

そう。つまり極端な話、80社なくなっても雇用が1:1でとんとんなわけですよ。

安田

なるほど。

久野

最低賃金を上げることによって会社がつぶれたところで、雇用はなくならないわけです。おそらく国はそう考えてやってる。

安田

「給料の安い仕事が外国人に取られる」なんて事態にはならないと。仕事なんていくらでもあるから会社がつぶれても全然大丈夫だと。

久野

そうです。あと日本とヨーロッパの明らかな違いって、言語と文化の違いなんですよ。これってめちゃめちゃ大きくて、日本人ってぜんぜん外国人を受け入れられてないんです。

安田

かなり受け入れてそうですけど。

久野

たとえば介護の職場って人がいないじゃないですか。

安田

はい。まったくいませんね。

久野

それなのに外国人が介護をやると、日本人の古い人って「外国人に介護されるのは嫌だ」っていうわけです。

安田

介護されてるくせに、そんなこと言うんですか。

久野

はい。そういうふうに思ってる人が多い。

安田

介護って微妙な距離感ですもんね。

久野

建設業の現場も同じ。たとえば解体みたいなところは受け入れられてるんですけど。

安田

受け入れない現場もあると。

久野

エクステリアみたいな庭工事になると、外国人が急激に減るんですよ。腕があろうが「外国人がいじってた庭」みたいに思われるのが嫌なんです。

安田

それはアジア人限定じゃないんですか。イタリア人とかがやってたら格好いいじゃないですか。

久野

でもイタリア人は来ないじゃないですか(笑)

安田

確かに。

久野

言語と文化の壁は大きいんですよ。だから会社が減っても日本人にはインパクトはないと私は思ってます。

安田

じゃあ最低賃金すら払えない会社がどんどんつぶれて、払えるところだけが残っていけば「働く側にデメリットはない」ってことですか。

久野

そうです。メリットのほうが大きい。ちなみに外国人にも最低賃金は適用されますので。

安田

じゃあ外国人研修生を「法律をかいくぐって安く使う」みたいな話は?

久野

確かにインチキな人もいます。日本って世界的には「外国人を奴隷のように使ってる国」という認定を受けてますから。

安田

やっぱりそうなんですか。

久野

どういうふうに使うかというと、労働時間中は確実に時給で払うじゃないですか。

安田

はい。

久野

でも内職みたいな感じで、残った仕事を寮に持って帰らせてやらせるんですよ。1時間100円とかで朝までやらせたりとか。

安田

じゃあやっぱり外国人に安い仕事は流れる?

久野

いや、外国人も逃げますので。摘発もされますし。

安田

なるほど。

久野

私が関与してる会社では、外国人をすごく大事にしてますよ。日本人が来ないから。

安田

じゃあ「日本人の仕事が奪われる」ってのは勝手な妄想だと。

久野

はい。日本人の仕事を奪ってるわけじゃないんですよ。日本人やりたがらない仕事をやってくれてるだけ。

安田

もっと感謝しろと。

久野

私は救世主だと思いますけど。

安田

なるほど。じゃあ外国人はどんどん受け入れたほうがいい。

久野

受け入れられる体制はつくんなきゃいけない。外国人が日本の労働を奪うっていうことは全然ないので。

安田

今回のアップで最低賃金を払えない会社はつぶれていきますよね。

久野

そうなるでしょうね。

安田

払えるところだけが残る。

久野

はい。かなりの会社が淘汰されると思います。

安田

それでも雇用はなくならないし、結果的に収入は増えるので最低賃金アップはいいことだと。

久野

そう思います。

安田

じゃあ反対してるのは経営者なんですか。

久野

まず経営者ですよね。あとは何となく「仕事を奪われるんじゃないか」って想像してる人。

安田

でも韓国なんかは労働力不足であるにも関わらず、最低賃金上げて失業者が増えたって言われてますけど。

久野

あれは最低賃金をいきなり上げすぎたんですよ。

安田

確かに。東京で1000円超えたのも「やっとか」って感じですもんね。1500円ぐらいでもいいんじゃないかって気がします。

久野

今までが異常だったんですよ。893円を895円するのが日本の基準だったじゃないですか。「900円なんてなったら凄い」みたいな。

安田

もっと高くてもいいと。

久野

じっさい東京都はもっと高いと思います。

安田

東京の現場としたら「既に1000円以上払ってるから関係ないよ」って感じですか。

久野

そう思います。田舎は結構最低賃金ギリギリなところが多いですけど。

安田

田舎ほど賃上げはこたえると。都市部は平気?

久野

名古屋でも最低賃金で募集してる会社なんて1社もないですからね。

安田

じゃあ今後は都心に向かってさらに人が動いていく?

久野

いや、地方も人が足りてないので。そこで稼ぐ人も出てくると思います。

安田

地方の人件費も上がるってことですか。

久野

たとえば建設って地域性がある商売じゃないですか。

安田

まあ地域に根ざした仕事ですよね。

久野

そうすると、誰かがやらなきゃいけなくなるんですよ。

安田

でも安いと誰もやりたがらないですよ。

久野

だから上げざるを得ない。実際にもう上がってます。

安田

そうなんですか!?

久野

今、顧問先300件のうちの半分くらいが多治見とその周辺にあるんですけど、既に9割以上の会社は最低賃金より高いです。


久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/

 

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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