さよなら採用ビジネス 第33回「運とコネと嫁と」

この記事について

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第32回「女性管理職は必ず増える」

 第33回「運とコネと嫁と」 


安田

大企業の人事って、ぜんぜん想像つかないんですけど。

石塚

中小企業は分かりやすいですからね。

安田

中小企業はオーナー経営者が多いんで、社長の鶴の一声みたいなもんじゃないですか。

石塚

そうですね。社長次第なところはありますが、結構ちゃんと評価されてますよ。中小企業は。

安田

大企業はそうじゃない?

石塚

まったく違いますね。

安田

よく石塚さんは「社内政治が大事」とか言うじゃないですか。

石塚

はい。絶対にそこは外せません。

安田

たとえば、次期社長って誰が決めるんですか?

石塚

基本的には後継指名ですね。だから現社長が決めます。

安田

でも大手の社長なんて、ほとんど株を持ってないじゃないですか。サラリーマン社長なのに、そんな権限があるんですか?

石塚

まず、株式をみんな薄く広く持ち合いしてるから、メインの株主ってあんまりないんですよね。

安田

銀行とかが持ってたりしますもんね。

石塚

でも、銀行なんて絶対口を挟まない。だから「〇〇ファンド」って人が来ると、途端にアレルギーになるわけですよ、予定調和を壊すから。

安田

予定調和を壊す?

石塚

持ち合いして“シャンシャン”でやるようにしてるのに、「株主としてこれを要求する」なんてM上さんみたいな人が来たら(笑)、それは嫌がりますよ。

安田

テレビドラマで見たんですけど、社長と会長が違う人を推してるみたいな。そういうことって実際にはあるんですか?

石塚

ありますね。

安田

そういう場合はどうなるんですか?

石塚

天の時、地の利、人の和で決まるんじゃないですか。

安田

運と人脈ってことですか?

石塚

政治力と、権謀術数と、多数派工作。大企業って、自分が上に行くと決めた時から、その戦いに参加せざるをえないんですよ。

安田

それは課長ぐらいから始まるんですか?

石塚

そうですね。

安田

ちなみに課長は、誰が選ぶんですか?

石塚

基本的には事業部門のヘッドが決めます。

安田

事業部門のヘッドっていうのは、取締役ですか?

石塚

大きい会社ならそうです。取締役か執行役員クラス。

安田

じゃあ、その時点で誰についていくかによって、だいぶ人生が変わる?

石塚

そのとおりです。

安田

「自分を気に入ってくれた事業部長」が出世しそうにない場合は、どうしたらいいんですか?

石塚

勝ち馬に乗れるか乗れないか。単純にそこで決まっちゃいますね。

安田

それは選べるんですか?下は。「あっちの勝ちそうな部長のほうに行きたい」とか。

石塚

いや、それは無理です(笑)

安田

無理なんですか?ということは運?

石塚

もちろん運ですよ。

安田

じゃあ、政治力だけではダメってことですか?運もないと。

石塚

だって安田さん、考えてみてください。そもそも、みんな似たような学歴で、似たような仕事してたら、どこで差がつくんですか?運だけでしょ。

安田

え!運だけですか?

石塚

いろんな会社の、いろんな人事の裏とかを聞くけど、いつも思うんですよ。「やっぱ運だな」って。

安田

それは元々のポテンシャルが、あまり変わらないからですか?

石塚

そのとおりです。差がつかないんですよ。

安田

みんなエリートですもんね。能力も高いし、やる気もあるし。

石塚

まず本人の運。それと「奥さん」はやっぱり大きいです。

安田

奥さん?

石塚

はい。男子の場合はですよ。これから女子がたぶん出世争いで戦に臨む。そうしたら今度はダンナの内助の功でしょうね。

安田

じゃあ、奥さんも、その出世競争を理解してて、一生懸命応援してるわけですか?

石塚

そういう奥さんじゃないと出世できません。

安田

そんなことより「早く帰ってきてよ」みたいな奥さんだと勝てない?

石塚

「応援してくれる奥さんをもらう」っていうのも、すでに競争なんですよ。

安田

常務の娘と結婚する、みたいなのもあるんですか?ドラマみたいな。

石塚

もちろんありますよ。

安田

あるんですか!?

石塚

あります、あります。でも、その常務がダメになったら、ぜんぶ終わりですけどね。

安田

そうですよね。

石塚

でも結論から言うと、まず勝ち残れないですよ。

安田

それは、どういう意味で?

石塚

大企業って、万単位で社員がいて、取締役とか執行役員になれるのは30〜40人。多くて70〜80人じゃないですか。

安田

かなり確率が低いってことですか?

石塚

だって数万で70〜80ですよ。まずそこに入れないですよ、普通は。

安田

実力があっても入れない人って、結構いるんですか?

石塚

「この人だったら、ひょっとして」みたいな人でも、あえなく天の時を得ず「関連会社の常務として一丁あがり」みたいな。そういう人を何十人見たことか。

安田

逆に「なんでこの人が?」みたいな人が、社長になるケースもありますよね?

石塚

ありますね。

安田

あれも運ですか?

石塚

メチャクチャ運がいいんですよ。

安田

たまたま不祥事で、上がいなくなるとか?

石塚

あります、あります。

安田

「今回は無難な人をつけたほうがいい」みたいなのも、あるんですか?

石塚

おっしゃる通り!「この事業部から不祥事出たから、本当はここから上がるのが不文律だけど、今回だけは違う部署から上がる」みたいな。

安田

それは中継ぎみたいなもんですか?

石塚

中継ぎのつもりで登板したら、長期政権になったりとか。

安田

もはやドラマですね。

石塚

はい。実際ドラマ性はすごくあるんですよ。

安田

無理やりドラマチックに作り込んでるのかと思ってました。

石塚

池井戸潤とか高杉良とか、ほぼ実話です。僕はあまり興味ないですけど。

安田

石塚さんは本物を見過ぎているからですよ。

石塚

ですね。ドラマでまで見たくないです(笑)

安田

ちなみに、相撲の世界には「ガチンコ」ってあるじゃないですか?

石塚

ありますね。

安田

忖度とか一切なしで「実力だけで勝負する」みたいな。

石塚

まあ相撲は本来、そうあるべきですけど。

安田

出世競争にもガチンコってあるんですか?上司の顔色とか人脈とか、一切無視して「俺は実力だけで社長になる」みたいな。

石塚

ありえません。

安田

ガチンコで社長になったサラリーマン社長はいない?

石塚

いません。

安田

でもたまに、それっぽい人いるじゃないですか?

石塚

そう見えるだけで、最初からぜんぶガチンコでやってるわけじゃない。

安田

そうなんですか?

石塚

自分の色を出し始められるのは、せいぜい部長ぐらいからです。

安田

そういえば私、新人時代に好き勝手言って、かなり浮いてましたね。

石塚

新人時代から「自分の色を出したがる」安田さんみたいな人って、まず出世できません。

安田

やっぱり無理ですか。

石塚

とにかく、ものすごい大きな組織なので。そんなことやってたら、みんなに迷惑かかるじゃないですか。

安田

迷惑ですか?

石塚

だって交差点の真ん中で車止めてる、みたいなもんですよ。「早くどけよ」「みんなが迷惑するだろ」みたいな。

安田

なるほど。私はそういう状態だったんですね。組織に求められなかった理由がよく分かりました。

 


石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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