さよなら採用ビジネス 第76回「利益に貢献する意味」

この記事について

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第75回『なぜグレーな仕事はなくならないのか』

 第76回「利益に貢献する意味」 


安田

味の素までもが、ついに早期退職を開始しました。

石塚

もう、どの大企業もその流れですよ。

安田

今回は「50歳以上の管理職を100人早期退職させる」という計画です。

石塚

いま売上・利益ともに悪くないですからね。

安田

百数十億の黒字ですよ。

石塚

だから今なんですよ。決断がすばらしい。

安田

確かに「黒字のいまこそ経営改革」って言ってましたけど。社員さんは納得できないんじゃないですか。

石塚

そりゃあ納得いかないでしょうね。

安田

「みんなで黒字にしたのに、それでリストラかよ」みたいな。

石塚

たぶん経営者は不安でしょうがないと思いますよ。

安田

それは売上が下がってるからですか?

石塚

それもあるでしょうけど、いちばんは多様性に乏しいこと。

安田

多様性ですか。

石塚

味の素に限りませんけど、日本の大企業がいちばん変えなきゃいけないのは、年収ばっかり高くなって付加価値を生み出せない50歳以上。

安田

リストラ対象の「50歳以上の管理職」の中には役員も入ってるんですか?

石塚

役員は入ってないと思います。

安田

じゃあ経営陣も50歳以上なのに、社員だけを切ろうとしてると?

石塚

おっしゃるとおり。頭が固くて、付加価値も生まない、年収に要は見合わない社員を切りたい。

安田

味の素の50歳以上ってどれぐらいの年収なんですか?

石塚

おそらく平均年収1,600万ぐらいでしょう。

安田

そんなにあるんですか!

石塚

はい。

安田

じゃあグローバル競争で勝つには、そこにメスを入れるしかないと。

石塚

それしかないです。

安田

でも何のために勝つのかっていうと「働いてる人に安定した生活」をもたらすためでしょ。本末転倒じゃないですか。

石塚

公開企業だから、四半期ごとの業績をよくするっていうのが第一義の目的ですね。

安田

じゃあ頑張って会社に収益をもたらしたところで「自分に返ってくるわけじゃない」ってことになりますね。社員にしてみたら。

石塚

まあ構造的にそうなってますから。

安田

今必要とされている若い人も、将来的には同じことが起こるわけですよね。

石塚

大企業自身が「もう終身雇用は約束できない」って言ってますから。

安田

社員の側から見たら「ひどい裏切りだ」って感じですけど。そもそも上場企業に就職したのが間違いなんですか。

石塚

途中で変わっちゃったんですよ。30年前に味の素に入った人たちは「よし、これでもう安泰だな」って思ってたはずなので。

安田

途中で変えるのは酷いじゃないですか。

石塚

まあそうなんですけど。もはや味の素でさえ「将来は分からない」ってことだと思いますよ。

安田

じゃあ安定を求めて大企業に入ること自体「もはや意味がない」ってことですか。

石塚

イエス。そのとおりです。

安田

逆にオーナー企業のほうが安定してるかもしれませんね。「うちは社員ファーストでいくよ」ってオーナーが言ってる会社。

石塚

意外に中小企業さんでそういう会社はありますよ。

安田

ありますよね。まあその方針がずっと続くかどうかは分かりませんけど。

石塚

続く・続かないで言ったら、大企業も中小企業も分からないですよ。

安田

そういう時代ですもんね。

石塚

はい。大きいところは大きいがゆえのデメリットあるし、小さいところは小さいところなりの不安定さがあるし。

安田
ちなみに会社が上場することって、社員には何かメリットあるんですか?
石塚

メリットと感じる人もいれば、感じない人もいる。つまりその人次第。

安田

たとえばどんなメリットがあるんですか?

石塚

株を持ってたら公開した時に売却益が入ってきますし、「上場に携わる」という仕事自体に価値を感じる人もいます。

安田

売却益なんて、創業者とかオーナーに比べたら微々たるもんですよ。

石塚

まあ微々たるもんですけどね。でも、それが「自分がやってきたことの証」になるんじゃないですか。

安田

そんなもんですかねえ。

石塚

上場を目指すスタートアップって、短期間でどんどん求められる仕事が変わっていくので、すごく勉強になります。

安田

つまり、いろんな体験ができて「自分の市場価値が上がる」ってことですよね。

石塚

そのとおりです。

安田

確かに「スキルや経験が蓄積される価値」はあるかもしれないです。でも会社の利益を増やすことに関しては、社員にあんまり価値がない気がします。

石塚

まあ社員はそう思ってしまいますよね。

安田

これまでは「会社の利益=社員の未来の安定」という図式だったじゃないですか。でも今は一致してませんよね。

石塚

してません。

安田

「会社に利益残すために頑張れよ」っていう言い方では、もう社員はついてこないでしょ?

石塚

無理ですね。

安田

会社に利益を残すことが「いかにあなたたちのメリットか」ってことを訴えないと。

石塚

かつての日本型経営って「会社が潤えば、われわれも潤う」「みんな家族」という考え方が、大企業も含めてあったんですけど。

安田

それに代わるものが必要ですよ。

石塚

まあ単純に考えれば、収益が残るってことは「ビジネスとして正しい」ってことなんですよ。

安田

ビジネスとして正しい?

石塚

たくさん利益が上がるってことは、お客様も満足していてそのビジネスが正しいというひとつの証拠。

安田

まあそうでしょうね。

石塚

その正しいビジネスの「組み立てに携わっていた」ということ自体が価値となる。

安田

ということは「会社の利益が増える」ことに価値があるんじゃなくて、「利益をもたらすスキルが自分にある」ってことがマーケットでの価値になると?

石塚

そう。そのとおり。

安田

だから「利益に貢献することには価値があるよ」ってことですか?

石塚

「自分が関わった仕事で出した結果です。証明としてこうなっています」と。

安田

「あなたの貢献は無駄にはならない」と。

石塚

おっしゃるとおり。収益上げたことに貢献したってことは、自分の市場価値の証明でもあるってことです。

安田

なるほど。じゃあ、どんどん転職したほうがいいですね。価値を高めていって。

石塚

転職しないで収入を増やせる人は、ごくごくまれな時代になるんじゃないでしょうか。

安田

自分の収入は自分で上げろと。

石塚

まったくもってそのとおり。


石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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