第179回「新たなビジネスを切り拓く『アルムナイ』という小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「新たなビジネスを切り拓く『アルムナイ』という小さなブルーオーシャン」


アルムナイ(Alumni)という言葉をご存知ですか?

特定の組織や機関を卒業または退職した元メンバーを指す言葉です。一般的には、学校や大学の卒業生、企業や団体の元社員、メンバー、または組織に関わった人々がアルムナイとされます。

最近、大企業は退職者とネットワークを強化し、コミュニケーションや情報共有を測っているというのです。その理由は3つ。
元社員を再雇用しやすくする
新たなビジネスアイデアを生み出すため
人材の採用力向上

こうしたアルムナイネットワーク構築を支援している会社があります。
株式会社ハッカズーク(東京都新宿区)です。

同社が手掛けているOfficial-Alumni.comは、企業と退職した元社員(アルムナイ)に特化したクラウドシステムです。このシステムを通じて、人事担当者などの管理者はアルムナイを検索し、コミュニケーションを取ることができます。また、アルムナイ自身もクローズドなSNSに参加し、他のアルムナイや一部の社員と繋がるメリットを享受できます。

中小企業にとって「アルムナイ」は貴重なリソースなのでは?

中小企業は慢性的に人材不足です。年中、採用活動をしている企業もあります。ところが、採用できないばかりでなく、応募すらないという話もよく聞きます。そんな状況の中で、退職していかれる人材もいますので、ますます人材不足へ…。経営者や人事担当者の頭の中にはこうした状況を打破しようと、流行の採用手法に手を出しますが、これは本質から外れていく行為だと、なかなか気づけません。

そこで、アルムナイ。中小企業にとって、アルムナイは貴重な資源となり得るのではないか、と思うのです。

彼らは組織の過去の一員であり、その組織や文化を理解しています。アルムナイを活用する際の目的は多岐にわたります。再雇用や業務委託、採用ブランディングの視点から利用するだけでなく、退職後のキャリアを可視化し、人事制度や環境の改善に活かすこともあります。さらに、ビジネス連携やオープンイノベーションを目的とすることもできるでしょう。

縁を切るのではなく、つながりを維持することの重要性

大企業の例にはなりますが、参考にすることはできます。
2022年9月にアルムナイネットワークを立ち上げた三井住友海上火災保険が運営しているのは「MSビジネスネットワーク」。登録者数は約300人だそう。その中には「アルムナイサポーター」と呼ばれる20歳後半~50歳アルムナイが6人存在し、企画を推進しているそう。それぞれ、コンサルティング業界、保険業界、IT業界などに所属しているのだという。

三井住友海上ではアルムナイ同士の交流会や現役社員との交流会なども開き、その後のビジネス連携につながりやすい試みもしている。

日本企業、特に中小企業では、退職した人に「裏切られた」という意識が強いのではないでしょうか?これまでの日本は終身雇用をうたっていましたが、離職率はそれなりに高い状況が続いていました。退職した人とは「縁を切る」という考え方が根強く残っているわけです。しかし、実は退職した人というのは、自社の中と外を知る人材として貴重な存在です。

前述した三井住友海上でも「辞めてしまったら、二度と三井住友海上の敷居はまたげないと思っていた」という声もあったそうです。

日本は新卒に優しい国。だからこそ、つながりを維持した方がプラスになる

特に新卒採用を行なっている中小企業は、積極的にアルムナイとの関係を維持し続けるべきだと思います。企業は新卒で採用した社員に研修などの投資をしています。だからこそ、経営陣は退職されるとイライラしてしまうのです。「あんなにお金をかけて育てたのに」「ようやく一人前になったと思ったら辞められた」。こんな恨み節はあとを絶ちません。

気持ちはわかるのですが、退職してしまった人と縁を切るよりも、つながりを維持し続けるほうが、お互いにとってプラスになるのではないでしょうか。

アルムナイは中小企業にとって貴重な資源であり、その関係は新しいビジネスを切り拓く鍵となります。退職者=裏切り者という考えを変え、つながりを維持し続けることの方が、中小企業にはメリットがあるという小さなブルーオーシャンでした。

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会社名 株式会社ハッカズーク
所在地 東京都新宿区西新宿
URL https://www.hackazouk.com/
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佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

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