第45回 愛犬のための葬儀サービス「いぬのおしり」

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第45回 愛犬のための葬儀サービス「いぬのおしり」

安田
のうひ葬祭さんでは、愛犬の葬儀ができる『いぬのおしり』というサービスをやられています。実はこのサービス、私も一緒に考えさせていただいたわけなんですが。

鈴木
そうですね、確か最初に打ち合わせしたのが2019年頃だったと思います。その節はいろいろとお世話になりました。
安田
いえいえ、こちらこそ。コロナ禍で当初の予定からずれ込んだものの、無事2020年7月からサービスをスタートさせることができましたよね。あれから3年半ほど経ちますが、依頼数もだんだん増えてきているんでしょうか?

鈴木
ちょうど数日前から今日にかけて4件ほどご依頼をいただきましたね。とはいえ、まだまだこれからという感じです。
安田
新サービスを軌道に乗せるのってなかなか大変ですよね。ちなみに今はどのように集客されているんでしたっけ?

鈴木
SNSとチラシですね。チラシは折込配布をしたり動物病院さんに置かせてもらったりしていますが、やっぱり地方はチラシは強いですね。依頼してくださる方ほぼ全員、チラシを見てご連絡してくださっています。
安田
確かに今すぐには必要ない人でも、ワンちゃんを飼っている方なら「愛犬の死」はいつか必ず直面する問題ですからね。ネットの広告と違い、チラシは保管もしやすいですし。

鈴木
そうだと思います。そもそもこの地域だと「ペット火葬=行政のサービス」という先入観があって。それ以外の選択肢もあるんだよと知ってもらうことが重要で。
安田
それで思い出したんですが、このサービスを考え始めた頃にすごく驚いたんですよね。「え、ペットって火葬しなきゃダメなの?」って。だって我々の時代は、ペットが死んだら庭とか原っぱに埋めてたじゃないですか。

鈴木
そうですね。自宅の敷地内だったら埋めても問題はないのかもしれませんが、今は火葬される方がほとんどです。
安田
いやはや、時代は変わりましたね。ともあれ火葬と言っても、先ほど出た「行政のペット火葬」の場合、人間のように1人ひとり火葬されるわけじゃないんですよね。

鈴木
そうなんですよ。一定量が集まったらガサッとまとめて火葬するシステムで。
安田
そうみたいですね。それを聞いて「それはもう火葬というより焼却じゃないか」というようなことを言った覚えがあります。当然、お骨拾いもできないわけでしょう?

鈴木
できませんね。そもそもたくさんの骨が混ざっているので、どれが自分の愛犬のものか見分けるのは不可能です。その分、費用はとても安いんですけどね。
安田
いやあ、その話を聞いた時、「家族の一員であるペットとのお別れがそんなカタチでいいの?」と驚きました。だからこそ、ペットともきちんとお別れしたいというニーズは必ずあると思っていて。

鈴木

そうですね。実際、「犬の葬儀」をやってくれる会社さんもあることはあるんです。ただそれは「人間の葬儀のかたち」にかなり近づけているんですよ。

安田
そうでしたね。豪華な祭壇を作ったり、お坊さんがお経をあげたり、戒名までつけるところもあると聞きました。

鈴木
そうそう。でもそれって愛犬は本当に望んでいることなの? 人間の勝手なエゴでやっていない? というところから、この「いぬのおしり」というサービスが生み出されていったんです。
安田
「犬ばか社員が考えた、愛犬とのお別れのかたち」。これが「いぬのおしり」のコンセプトですから。

鈴木
はい。実際に、「いぬのおしり」の責任者も愛犬家なんですが、自身のワンちゃんを亡くしたときに感じたことや経験したことがこのサービスにも大きく生かされています。
安田
具体的にどういったプラン内容なのか、教えていただけますか?

鈴木
愛犬の個別火葬とお骨上げをしていただくことができ、骨壷など供養に使う備品までセットでお渡しするプランをご提供しています
安田
なるほど。ほとんどの方がご自宅で愛犬とお別れをすることになると思いますが、火葬はどうやって行われるんですか?

鈴木
移動火葬車というものがあるんです。「いぬのおしり」のサービスサイトにも写真がありますが、見た目はごく普通のバンなんですが、中に火葬炉が載っていて。で、ご自宅やのうひ葬祭の式場の敷地内で1時間ほどかけて火葬することができます。
安田
なるほど。火葬炉ごと移動できるから個別火葬に対応することができるわけですね。棺はどうするんですか?

鈴木
こちらでご用意することもできますし、飼い主の方がご用意されたものでも問題ないですよ。
安田
棺に安置してから火葬までの流れは人間と同じですか?

鈴木
そうですね。棺の中にワンちゃんが好きだったオモチャや家族写真、ご飯、おやつなんかを入れて、手を合わせていただき、棺を閉めて火葬、というのが通常の流れになります。
安田
ちなみにこの移動火葬車って、「いぬのおしり」のために特注したんですか?

鈴木
ええ、そうです。この移動火葬車のおかげで1匹ずつ火葬できて、お骨もすべて拾っていただくことができるんです。
安田
そこが行政のペット火葬とは一番違う点だし、愛犬家にとって一番嬉しい点なのかもしれないですね。ところで、人間でいうところのお通夜とかお葬式のようなことにも対応していただけるんですか?

鈴木
できますよ。すぐに火葬はせず、ゆっくりとお別れの時間を取りたい方もいらっしゃいますから。そういう場合は、想い出の品やお花を飾る祭壇を作ったり、愛犬の遺体が傷まないようにドライアイスをご用意したりといったサービスをオプションでつけられます。
安田
なるほど。ところでこれまでに「いぬのおしり」のサービスをご利用された方って、地元の方がほとんどでしたか?

鈴木
ほぼ地元の方ですね。一度、名古屋の手前くらいの場所まで出張したことはありましたけど、あくまで地元を中心に知名度と実績を上げていこうかなと思っています。
安田
私、この「いぬのおしり」というネーミングが、「葬儀っぽくなく、犬とお別れできる」ということを端的に表せていると思っていて。だからこれから愛犬家の間で「いぬのおしり」という名前がどんどん広まっていく気がします。

鈴木
そうなると嬉しいですね。そもそも名前の由来が、「ペットが亡くなった後に虹の橋を渡っていくけど、その最期にお尻が見えるよね」ということと「犬好きな人って、犬のお尻が大好きだよね」というところからアイディアが出たんでしたよね。
安田
ええ。そういうバックボーンのある「いぬのおしり」という言葉は、きっと愛犬家の方の心に響くんじゃないかなと。

鈴木
なるほどなぁ。もう少しPRの仕方を工夫してみるようにします!(笑)
安田
ぜひぜひお願いします(笑)。愛犬家にとってはもちろん、愛犬にとっても素晴らしいサービスだと思いますので、もっと多くの方に知ってもらいたいです。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

感想・著者への質問はこちらから