ルールに隠された意図を読め!
第45回「100%の境目」

この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第45回「100%の境目」

安田

三菱電機の子会社で過労自殺があった件なんですけど。

久野

はい。過労であることが認定されましたね。

安田

そうなんですけど、世の中の意見はいろいろ分かれてまして。

久野

そうなんですか?

安田

「過労になるほど働かせちゃいけないだろ」っていうのが普通なんですけど。「受注段階で安い仕事を取りすぎだ」って意見も結構ありまして。

久野

それよく分かります。

安田

でも取ってしまったからには、働かないと仕事が納まらないし。納期を守ろうとすると過労になっちゃうし。難しいところですよね。

久野

中小企業なんか特に顕著ですけど、経営者の人が「取った時点でもう赤字」みたいな仕事があるんですよ。

安田

中小企業はたくさんありそうですよね。

久野

根本的な問題はもともと儲からない仕事をさせてること。労働の量の問題ではないんです。

安田

大企業でもそういうのがあるってことですか?

久野

はい。大企業は人件費が高いので。

安田

確かに。三菱電機の子会社だったら人件費は高そうですね。

久野

はい。でもそれに見合う仕事が取れてない。

安田

大手にはたくさん人がいるんですから「みんなで手分けしてしてやりゃーいいのに」って思いますけど。

久野

大手の下請けってすごくシビアなんですよ。

安田

そうなんですか?

久野

T自動車なんかも、売上は過去最高って言われてますけど。下請けに対しては「乾いた雑巾を絞る」っていう噂があるぐらい。

安田

乾いた雑巾を絞る?

久野

毎年毎年コスト削減を迫るんですよ。

安田

仕事出すから安くしろってことですか。

久野

そうです。「去年と一緒じゃいけないよね」と。

安田

「今年はもっと安いコストでできるだろ」って感じで?毎年ですか。

久野

それがもう日本の大企業のルールになってて。三菱もそれは一緒だと思いますよ。

安田

じゃあ大手系列の下請け孫請けって、下にいけばいくほど乾いた雑巾のようになってくってことですか。

久野

基本そうなりますよね。

安田

でも過労死が認定されたので、グループ全体として見直せって話になりませんか?値引き要請自体を見直せとか。

久野

そう簡単には行かないでしょうね。大手は大手で価格競争をしてるので。

安田

じゃあどうすればいいんですか?この先。

久野

やっぱり今の時代、売上の10パーセント以上を1社に依存してるっていうのが、そもそも大問題なんですよ。

安田

大手系列なんて下手したら10割とかありますよ。

久野

だから厳しい値下げ要求も断れないんです。

安田

じゃあ大手系列といえども、自分たちで新規開拓して受注先を分散させて、値上げ交渉しろってことですか。

久野

関係性にもよりますよね。100パーセント子会社だったらグループの一員なので。

安田

そういう場合はどうしたらいいんですか?

久野

そこはもう親会社が全部面倒見るしかない。

安田

面倒見てくれますかね?

久野

保証はありませんけど、まだマシじゃないですか。一番まずいのは中途半端に出資されてるところとか、出資関係もないのに子会社っぽくなってるところ。

安田

なるほど。子会社としてサラリーマン化してればまだ安心だと。

久野

法的には守られますからね。

安田

じゃあ100パーセント子会社のほうが、親会社に泣きつけばなんとかなると。

久野

上のほうから必ずコンプライアンスを守らせられるようになってくるでしょうね。

安田

じゃあ「次からはもうちょっと高く発注するから、3人でやってたところを5人でやりなさい」なんてことになるんですか。

久野

上のほうから人が来て、いろんな改善の指導とかされるでしょうね。

安田

どう改善するんですか。今だって結構ギリギリだと思うんですけど。賃下げとかになるんでしょうか?

久野

それは労働法的に難しいでしょうね。

安田

ですよね。じゃやどうするんですか。

久野

まず仕事区分ですね。大手っていろんな種類の仕事があるから。

安田

仕事区分?

久野

要は「儲かってる仕事」と「儲かってない仕事」に分けるってことです。で、100%の子会社には儲かる仕事を投げる。

安田

なるほど。自分の系列には利益率の高い仕事を振って、株を持ってないところは儲からない仕事を振っていくと。

久野

そういうことです。

安田

恐ろしいことを考えますね。

久野

私の読みですけど。

安田

じゃあ中途半端な系列企業はかなりしんどいですね。

久野

外に活路を見出すしかないです。

安田

守るのは100パーセント子会社だけだと。

久野

そこはもう一体なので責任取らなきゃしょうがない。

安田

じゃあ中途半端な親会社はアテにならないと。

久野

厳しいでしょうね。

安田

「株主だからずっと仕事が入ってくる」みたいに思ってたら、えらいことになる?

久野

僕の肌感ですけどね。

安田

じゃあ早く外に活路を見出したほうがいいですね。

久野

そうなんですけど簡単じゃないです。大きなピラミッドの中でやってる会社って、外に活路見出せないような教育を受けてきてるんです。

安田

え!外に活路を見出せない教育?

久野

はい。たとえばT自動車の部品つくっててライバル企業の部品もつくるって、数パーセンの出資だったら別に問題ないじゃないですか。

安田

ぜんぜん問題ないですよね。むしろやるべき。

久野

問題はないんだけど業界の暗黙のルールの中で、上にお伺い立てなきゃいけない。

安田

ということは、自立しないといけないけど「自立させないような仕組み」をつくられてきたってことですか?

久野

そういうことですね。

安田

にもかかわらず100%子会社以外はもう面倒を見ないと。

久野

見ないというか見れない。もうそんな余裕がないんですよ。

安田

ひどすぎる。

久野

背に腹は変えられないですから。

安田

じゃあ見捨てられた会社はどうしたらいいんですか?

久野

どうしたらいいんでしょうね。


久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/

 

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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