第216回「5%だけの大変化」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第215回「食えてしまう40代バイト」

 第216回「5%だけの大変化」 


安田

就活マナーが刷新されると聞いたんですけど。

石塚

そういう流れですね。

安田

就活の面接は「こういう化粧で、こういう服を着て」みたいなことが、いまのジェンダー世代には「男女差別じゃないか」と。

石塚

どうなんでしょう。

安田

企業側もそういうものを求めなくなってる、ということなんですけど。

石塚

業界にもよると思いますよ。

安田

ですよね。社会に出たら、まったく同じように男女を扱うのも難しいわけで。女性ならではの仕事とか男性ならではの仕事とかもあるし。

石塚

おっしゃる通り。

安田

「男性はスーツにネクタイ、女性はスカート」みたいなのはもう古いんでしょうか。

石塚

ビジネスをやる人の選考なんだから、「ふさわしい格好をして来てください。それも選考対象に加えます」とシンプルに言えばいいだけ。

安田

自分で判断してくださいと。

石塚

だけど、それをやるのが日本人はいちばん苦手で。「そうはいっても基準を示してください。どこまではOKでどこからNGですか」って。

安田

失敗したくないんでしょうね。

石塚

そうなんですよ。極端に失敗を嫌う傾向があるから。

安田

リクルートスーツような、決まった服装はなくなっていきますか。

石塚

会社ごとに選考基準が違っていいと思うんですよ。差別しているわけじゃなく。

安田

でも企業って常識を求めるじゃないですか。金髪で就職活動する子はいないわけで。

石塚

そこも含めての選考ですよ。

安田

つまり「女性はちゃんと就活用のメイクをする」ってことになりませんか?

石塚

今は男でも化粧する時代ですからね。

安田

つまり女性がノーメイクであろうが、男性がメイクしてこようが、企業は気にしないってことですか。

石塚

そんなことはないと思います。

安田

ですよね。マイナビさんは「そういう常識を撤廃する」と言ってますけど。

石塚

それを強制したり押し付けたりするのがダメだってことですよ。

安田

押し付けなくても結局やるしかないでしょう。企業はそこを見てますから。

石塚

「自分はこれは譲れないんで」って金髪で受ければいいんですよ。

安田

それで受かりますか?

石塚

その結果はぜんぶ自分にはね返ってくるんだから、自分で受ければいいだけの話。

安田

つまり採用されないってことでしょ?それを受け入れるってことですか。

石塚

いやいや。金髪でも採用する会社はありますから。

安田

ありますか。

石塚

その人の中身にもよるじゃないですか。

安田

どんな中身ですか。

石塚

金髪だけどハーバードすごい成績で出ているとか。

安田

なるほど。

石塚

「自分はこれに関しては譲れない」って言われても、採用する会社はありますよ。

安田

そりゃ、ハーバードならあり得ますけど。

石塚

そう。だから就職を希望する学生のレベルによりけりなんですよ。

安田

いまの学生さんって、ジェンダーとか男女差別とか、いけないという常識で育っているわけですよね。

石塚

でしょうね。

安田

「就活だから女性は化粧します」なんて、もう時代遅れだと思ってるんじゃないですか。それでもマナーどおりにやる人のほうが多いんですか。

石塚

「いままでどおりやらないと怖い。変に踏み外したくない」というのが95%だと思います。

安田

やっぱりそうですか。

石塚

5%はちょっと変わっていて。そもそも就職や将来のキャリアに独自の考えを持っていて、「自分はこんなだから」みたいに割り切ってる。

安田

へえ〜。

石塚

そういう変わった人は一定数いる。これは昔からですけど。

安田

だけど大半の学生は企業ウケがいいようにやるだろうと。

石塚

おっしゃる通り。まあ5%が6%になるのか、ならないのか、ぐらいのレベルだと思います。

安田

なるほど。

石塚

だって、そんなに腹の据わった学生、日本人にはそんないないでしょう。

安田

確かに。企業側はどうですか。「それぐらい自己主張が強い子をとりたい」というのはないんですか。

石塚

それはどっちもどっちの話で。企業も「そんなストレンジャーな新入社員を採って、既存の組織でかしきれるの?」というのもある。

安田

金髪ハーバードも、ひとりぐらいだったらいいですけど。そんなのばっかり100人も採ったら大変なことになります。

石塚

100人採ったら大したもんなんですけど(笑)そもそも金髪のハーバードを戦略化できるだけのマネジメントがあるのかどうか。

安田

なるほど。

石塚

下手したら半年ぐらいで、「なんかつまんねー会社だなあ。もう自分で起業したほうが早いな」とかって言われちゃう。

安田

言われそう(笑)

石塚

だから本当の意味で才能、タレントを欲しているのか、「そうはいっても普通の人も必要だし」ということなのか。2層に分かれている気がします。

安田

つまり表立っては言えないけど、企業は昔のように服装なり化粧なりも見ていると。

石塚

見ているけれど、もしノーメイクでも、めちゃくちゃできる子が来れば採るでしょうね。

安田

へぇ~。やっぱり時代は変わりましたね。

石塚

それが仮にLGBTQだとしても採ると思う。本当に優秀なら。

安田

それは、いわゆる大手でも。

石塚

社風の堅い柔らかいはあるでしょうけど。いわゆる日本のトップ100といわれている人気企業はみんな採りますよ。いま優秀な人はひとりでも欲しいから。

安田

優秀であれば見た目は関係ないと。

石塚

関係ない。

安田

逆に言えば「そこまで優秀じゃないなら、マナーを守ってやりなさい」ってことですか。

石塚

そうそう。そこまでの主張ができないのだったら、まあ無難なところに落として無難な就活をやらないと。行き先がなくなっちゃう。

安田

つまり根っこは変わってないと。

石塚

5%のものすごく優秀な層に関しては、その争奪戦はちょっと異次元でやってます。

安田

異次元で?

石塚

それこそジェンダーレス、あるいは着こなし・メイクなんて関係なく、企業は能力で測ってくる。その5%に限っては。

安田

残り95%は今までと同じだと。

石塚

そう。いままでと一緒。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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