第108回 アンパンマンに勝てる美容師になる?

この対談について

「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。

第108回 アンパンマンに勝てる美容師になる?

安田

美容師さんって傍目にはすごく忙しそうだけど、すごく儲かっているかというとそうでもない。そのあたりの話は、これまでの岩上さんとの対談でも何度かありましたよね。


岩上

そうですね、現実はなかなか厳しいと思います。

安田

これは美容師さんに限らないですが、社会の多くの人は「生活のために仕方なく働いている」ような気がしていて…。理想を言えば、もっと生きがいを持って楽しく働けた方がいいと思うんですけど、その辺りはいかがでしょう?


岩上

美容師の仕事の仕方、という視点でお話するならば、ちょうど先日シェアサロンで働いている美容師さんたちに話したのが「美容師の社会的役割ってなんだろう」ということで。

安田

社会的役割、ですか。


岩上

ええ。そうすると皆さん「私はこれに特化しています」みたいなことを口々に仰っていたんですが、それって結局は「お客様を集めるための条件」になっているんじゃないかなと思いまして。

安田

ほう。もう少し具体的に教えていただいてもよろしいですか?


岩上

例えば「自分はパーマに特化してます」「今だったらこれくらい安い値段でやれます」「朝早くから夜遅くまで対応できます」っていう条件。そういう強み…いわば人参を目の前にぶら下げて人を「集める」働き方をしていると、最終的にどこかで詰んじゃうんじゃないかなと思うんです。

安田

ん? それはどうしてですか?


岩上

お客さん側がその人参に興味関心がなくなれば、スパッと切られちゃうからです。一方で人気のある美容師さんというのは、わかりやすい人参は意外とぶら下げてなかったりする。でもなんでかお客さんが集まってくるんですよ。

安田

ああ、なんとなくわかってきました。「条件」を武器に集客している人より、なんだかよくわからないけど集客できている人の方が強そうです。


岩上

そうそう。さらに言えば、僕は美容師の仕事って、自分のお客さんを「周りに自然と人が集まってくるような魅力的な人」にしてあげることだと思うんですね。

安田

ははぁ、繋がってきましたね。つまりそういう仕事なのだから、美容師さん自身もそういう魅力的な人であるべきだと。


岩上

僕はそう思うんです。「集める」というより「集まってくる」美容師さんを目指したほうがいいんだろうなあと。誰だって「自分を魅力的にしてくれる美容師さん」がいたら通いたくなっちゃうじゃないですか。

安田

確かにそうですね! つまり無理に集めることをしなくても、自然に集まってくる。そんな状態ができていくと。


岩上

そういうことです。そういう意味では、美容師業もある種の「推し活」なんですよね。

安田

ほう、推し活?


岩上

美容師自身がお客様の「推し」になるんです。お客様の心理としては「パーマが上手だからここに来る」というより「この人にお金を使いたい。この店に来ることが自分の幸せだ」みたいになっていくわけですよ。

安田

は〜、なるほど! まさに「推し活」になっていくわけですね! そういう状態になれば、もう「あっちのが1000円安いからもう来ないわ」みたいな発想にはなりそうもない(笑)。


岩上

そうそう(笑)。ただね、そこにはやっぱり先ほど言ったような、「ここに来ると自分がどんどん魅力的になるな」という感覚が必要なんです。そういう意味では、「稼げる美容師」というのは、「たくさんの人をより魅力的にしている美容師」なんでしょう。

安田

そうか…。でもそう言われると至極当然のことですね。岩上さんがしっかり稼げているのは、それだけたくさんのお客さんを魅力的にしてきたからですもんね。そしてそれを見た他の方が「私も岩上さんにカットして欲しい」と自然と集まってくる。


岩上

ありがたいです。そういえば、髪の毛を切られるのがとにかく嫌いな2歳くらいの男の子がいたんですけど。

安田

小さい子あるあるですね(笑)。


岩上

ね(笑)。でもある時、ウチのサロンでカメラマンとコラボして「家族写真を撮る」ってイベントがあって。それで僕が髪の毛をセットしてあげたのを機に、人が変わったかのように僕に懐いてくれまして(笑)。

安田

いいですね〜何かが通じ合っちゃったんでしょうね(笑)。


岩上

笑。その子が今、3歳になるんですが、先日『アンパンマンミュージアム』に行ったんですって。そしたらアンパンマンが髪を切ってくれるブースがあったそうで、親御さんが「せっかくだからアンパンマンに切ってもらおう!」って言ってみた、と。

安田

へぇ、アンパンマンに髪の毛切ってもらえるなんて、子どもからしたらたまらないシチュエーションじゃないですか!


岩上

そうなんですよ。ところがその子は「僕はアンパンマンじゃなくて、タクミさんに切ってもらいたい!」って(笑)。

安田

えぇ〜すごい! 岩上さん、アンパンマンに勝ったわけですね!(笑)


岩上

そうなりますね(笑)。これってまさに理屈じゃないんだなと思ったんです。技術とか効率がどうこうって話ではなくて、もっと感覚的なもの。そこをしっかり考えられるようになれば、人が集まってくる美容室は作れる気がしますね。

安田

本当ですね。仕事って本来、誰かの役に立って感謝されて、その一部がお金になるわけで。その順番を間違えて「お金」を目的にしちゃうと、途端に仕事が楽しくなくなってしまう。


岩上

同感です。だからこそまずは「集めよう」とするのをやめて、自然と人が「集まってくる」自分を目指していただくのがいいのかなと思いますね。


対談している二人

岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表

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美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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