第67回「−衰退産業という思い込みからの大逆転−強みを見直し、原点回帰した小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「−衰退産業という思い込みからの大逆転−強みを見直し、原点回帰した小さなブルーオーシャン」


「唯一生き残った洋酒樽の後発メーカーに一体何が…」

洋酒…

近年、ジャパニース・ウイスキーが
世界から脚光を浴びている洋酒ですが、
シャリー酒やブランデー、ウイスキーを
お好きな方も多いことでしょう。

蒸留、醸造された原酒は、
樽詰めして熟成が行われます。
この熟成によって、旨味や風味、
香りなどが決まっていきます。
また、熟成中に樽材から溶け出した
成分によって、お酒は徐々に琥珀色へと
変化していくのです。


有明産業オフィシャルサイトからの画像

お酒は樽材の隙間から一年間に約2~3%が
蒸発するそうで、これをエンジェルズシェア
(天使の分け前)と呼ぶそうです。
なんだかおしゃれですね。

これほどまでに洋酒に欠かせない「洋樽」ですが、
日本では唯一1社だけが存在します。
京都にある有明産業株式会社
かつて洋樽メーカーは4社ありましたが、
唯一生き残ったのが、この有明産業なのです。
有明産業は業界内では後発メーカー。
順風満帆というわけではなく、
ピーク時には20億円あった売上が、
2億円までに落ち込みます。
新規事業で再起を図るもののうまくいかない…。

当時専務であった現社長の小田原氏は、
洋樽業界は衰退産業だと思いこんでいました。
当然だと思います。

では、どう復活したのか?
強みを見直し、
洋樽を作って売るのではなく、
洋樽は「調味料」
酒造メーカーの製品価値を高めるもの
と気づかれたそうです。

この気付きから製品バリエーションを拡大。
例えば、焼酎などの蒸留酒は、もともと無色透明。
樽によって色や香り、フレーバーが異なります。
樽の焼き加減を変えることで、
バニラ香になったり、カラメル香になったり…。
これを提案していったそうです。

また、木材の加工にも着手。
加工が難しかった日本の木材を用いた
樽の開発に成功し、海外からの引き合いも増えたそう。

よく、モノを売るのではなく、コトを売る
と言われますが、樽を売るのではなく、
樽の価値に気づきその価値を売る。

本業を見つめ直す、強みの再確認を
してみることが、小さなブルーオーシャンを生み出す
ことになるのかもしれません。

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有明産業株式会社
京都市伏見区東菱屋町428-2
URL http://ariakesangyo.co.jp
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佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

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