第194回「おじさんが町おこしのリソースになる?!という小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「おじさんが町おこしのリソースになる?!という小さなブルーオーシャン」


地域活性化につながる「町おこし」。

「町おこし」と聞いて皆さんはなにを想像するでしょうか?
成功例として挙げられるのは、私たちの身近になったゆるキャラやB級グルメに代表される地域グルメでしょうか。
しかし、逆を言えば、これ意外の町おこし例がなかなかないのも現状です。
そんな中、「おじさん」にフォーカスして町おこしをしている地域を見つけました。

それは、福島県二本松市の山あいの岩代地区です。

おじさんたちにファンクラブ?!おじさんをめぐるツアーも…

福島県二本松市東部に位置する岩代地区は、現代の日本の典型的な山あいの地域を象徴するようなエリアで、高齢化や過疎化が著しく、若い人も少ない地域です。
高齢化率が約45%。およそ2人に1人は65歳以上の高齢者です。逆に18歳未満の人口の割合は1割に満たないのが現状だそうで…。

そんな中で、地域おこし協力隊として岡山県から岩代の地に赴任した岩代観光協会の有野真由美氏。地域の観光をPRするのが主な役目です。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、人同士の接触がままならない状況に。
そんな中、PR業務のために地域のゴルフ場やキャンプ場を回って知り合う人たちは中高年の男性ばかり。ところが、徐々におじさんと付き合っていく中で、おじさんごとに奥深い魅力を感じるようになったといいます。

「岩代はおじさんばかりの地域だが、逆に人や地域の魅力をおじさんで伝えられないか」

そう考えた有野氏が作り出したのが、「岩代おじさん図鑑」。

岩代地区に生息するおじさんをひたすら紹介する、というフリーペーパーです。
主に福島県外の人向けに作られ、これまで東京や大阪など県外およそ20か所で配布されました。

ゲームの攻略本風のデザインに、おじさんたちの生態や名言(迷言?)も多数掲載され、おじさんへの愛にあふれた内容にひそかにハマる人が続出。増刷するどころか、地元岩代でもぜひ手に入れたいという声が広がり、SNSなどのネットで拡散されて、一躍話題の冊子となっていったのです。

図鑑には、岩代地区に生息する50代から80代のおじさん20人が、キャラクターの紹介風に写真とプロフィール付きで紹介されています。おじさんの年齢は、ゲームで能力値の高さを表す「レベル」で表現され、趣味や特技、生きざま、豊富な経験をもとに練り上げられてきた人生訓などが記されています。若い人や女性でも見やすいように、おじさんたちが持つ年相応の渋みや味わいが、ポップに見やすく表現されているのも人気の秘密のようです。

岩代地区のおじさんたちに魅力を感じた人向けにすでにファンクラブも設立。下は8歳から上は80歳の方々が登録されているそうで、その7割は女性だそうです。

今後は、実際に岩代を訪問して、実際におじさんたちとふれあえる機会が得られる「おじさんをめぐるツアー」なども企画されているとか。

地域であれ、企業であれ、何がウケるのかわかりません。
有野氏を中心とした岩代観光協会の見せ方がうまかったのかもしれませんが、本質はそこではなく、「人」「おじさん」という誰も注目しなかったリソースに焦点を充てたことでしょう。
ぜひ、自社内のリソースをもう一度、点検してみてください。

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岩代おじさん図鑑
URL https://iwashiro-ojisan.studio.site/
※こちらからダウンロードできます※
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佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

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