会社依存症からの脱出

給料が安い。
昇給が見込めない。
仕事がつまらない。
こういう文句を聞くたびに
経営者時代の憤りが蘇ってくる。
「文句があるなら会社を辞めて好きに働け」
そう言いたくなる。

もちろん、経営者時代に
そんなセリフを口にした事はない。
そんなことをしたら、社内からも社会からも
大ブーイングを浴びることになるからだ。
経営者ではなくなった今、
私は雇う側ではないし、雇われる側でもない。
つまりはニュートラルな立場なわけだ。

この立場になってみて、
経営者に不満を言いたくなる労働者の
気持ちも多少は分かる。
社長だというだけで自分たちより遥かに高い給料。
会社名義の高級車に乗り、
飲食でも会社の経費を使い放題。
俺たちの給料をピンハネしやがって、という不満。

実際、社長はピンハネしているのだと思う。
もちろん、給料分、いやそれ以上に
仕事をしている社長もたくさんいる。
だがその収入を一人で稼げるわけではない。
社員を雇った方が会社の利益が増え自分の収入も増える。
だから組織を作っているのである。

ピンハネという言い方は良くないが、
雇う旨味がないなら人など雇うはずがない。
経営者は自らの収入のために人を雇っているのだ。
資金を用意し、事業を立ち上げ、人を雇う。
雇った人材を働かせ、彼らが生み出した利益から、
出来るだけ多くの利ざやを得る。

それは経営者の真っ当な働き方なのである。
その仕組みの中で、
自ら働くことを選んだものが社員となる。
誰の責任でもない。
文句を言うなら会社を辞めて自分で稼げ。
私はそう言いたい。

会社を辞められない人の反論はいつも同じだ。
お前は勝ち組だから
そんなことが言えるのだ、というもの。
自己破産し、一文無しでコツコツ働く私の、
一体どこが勝ち組なのだろうか。
会社から離れて稼げる人はほんの一部。
特殊な能力を持った人や、たまたま成功した人たち。
その思い込みは恐ろしいほどに深い。

雇ってくれる会社が無いから働けない。
会社が給料を増やしてくれないから、
いい生活ができない。
恐ろしいまでの思い込み。
そして恐ろしいまでの会社依存。
私たちはそろそろ、ここから脱出しなくてはならない。

会社が仕事をくれない。
だったら自分でつくればいい。
会社が給料をあげてくれない。
だったら自分でもっと稼げばいい。
この自由な社会において、
自由にネットと繋がれる現代において、
会社に勤める事は、
選択肢のひとつに過ぎないのである。

 


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