計算するバカ・しないバカ

足し算・引き算が通用しない時代である。人件費を抑えて利益を出すとか。値引き商品で集客コストを抑えるとか。規模を拡大して経営効率を上げるとか。

人件費を抑えようとすると採用コストが跳ね上がる。集まる人材のレベルが下がる。定着率も悪くなる。結果的に利益が圧迫されてしまう。

値引きで集めた顧客はすぐに離れていってしまう。通常価格では買おうともしない。仕方なくまた値引き集客をする。この繰り返しで集客コストはどんどん増えていく。

規模を拡大したことで固定費が増える。それを賄うために営業や広告に力を入れる。販売コストがどんどん増えていき、社員ひとりあたりの収益がどんどん悪化していく。

計算が合わない。減らしたはずのコストが増えていき、増やしたはずの利益が毀損していく。単なる足し算・引き算経営はもう通用しないのである。計算を超えた非常識な経営。それだけが収益アップを可能なものにする。

同業他社には目もくれず高い価格設定をする。休みを増やし、報酬を引き上げ、人件費率を高めていく。依頼が増えても単なる規模拡大はせず、顧客の依頼を断ったりもする。その結果、優良顧客だけが残り、やる気のある人材が定着し、顧客のファン化やアップセリングへとつながっていく。

確実に利益が出る戦略を積み重ねた経営者は利益を失い、利益を無視したような戦略を積み重ねた経営者が利益を得る。堅実に、着実に、利益を積み重ねることが難しい時代。無謀に見える経営がなぜか結果に結びつく時代。では計算など無視して経営すればいいのか。

もちろん、そんなことをすれば会社は破綻する。間尺が合わない時代の新たな計算式を手に入れなくてはならないのである。それは利益を積み上げていく演繹法ではなく、結果から逆算する帰納法でなくてはならない。

採用コストをかけずとも人が集まり、自らスキルを磨き、生き生きと仕事をして長く活躍する会社。安売りをしなくても顧客満足度が高く、リピートや紹介が増えていき、営業や販売にコストがかからない会社。ここがゴール。

ゴールの1歩手前、2歩手前、3歩手前とイメージしていき、今やるべきことを明確にする。同業他社からは計算のない無謀な経営に見えるのだが、実は計算し尽くされた経営なのである。小手先の算数はもう通用しない。ゴールから逆算した美しき数式だけが、未来を切り開くのである。

 

この著者の他の記事を見る


尚、同日配信のメールマガジンでは、コラムと同じテーマで、より安田の人柄がにじみ出たエッセイ「ところで話は変わりますが…」と、
ミニコラム「本日の境目」を配信しています。安田佳生メールマガジンは、以下よりご登録ください。全て無料でご覧いただけます。
※今すぐ続きを読みたい方は、メールアドレスコラムタイトルをお送りください。
宛先:info●brand-farmers.jp (●を@にご変更ください。)

 

1件のコメントがあります

  1. 久しぶりのコメントです。今日のコラムの内容は、実践するのは難しいが価値がある考え方と思いました。いつもコラム、ありがとうございます。

感想・著者への質問はこちらから