第120回 AIが奪えない「考える」という人間の営み

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第120回 AIが奪えない「考える」という人間の営み


藤原

AIが私たちの生活に入ってきてだいぶ経ちますけど、文章を書いてくれるようになったのがすごく大きな転換点な気がしていて。

安田

AIは体系的にまとめたり要約したりするのがめちゃくちゃ得意ですからね。企画書を作ったり何かを調べたりするのには本当に便利です。


藤原

そうなんですよね。安田さんはコラムを書いているし私はメルマガを毎日配信している。そうやって文章を書くことが生業の一部になってますけど、これからも人間が書き続けることの価値ってどこにあるんだろうと。

安田

それでいうと、「これは絶対に人間にしか書けない」と断言することはできなくなるんじゃないですかね。少なくとも将来的には。


藤原

やっぱりそうですよね。AIは小説も書いていて、人間が読んで面白いと思えるレベルには既に達している。でもそうなってくると、文章を書くことを仕事にしている人はどうなるんでしょう。

安田

どうなんでしょうね。ただ一つ言えるのは、AIを使って文章を作り上げていく人と自分の頭で考えて書いている人とでは、会話したときの話の進み方が明らかに違うなとは感じるんです。


藤原

ほう、なるほど。具体的にはどういう違いを感じますか?

安田

うまく言語化しにくいんですけど、思考の奥行きが違うというか。自分で書いている人は言葉に独特の引っかかりがあるんですよ。


藤原

引っかかりというのは、いい意味での違和感みたいなものですかね。きれいにまとまりすぎていない感じというか。

安田

そうそう。私は昔から書くことは包丁の砥石みたいなものだと思っていまして。自分の頭で考えて自分の言葉で文章を書くのは、脳みそを研ぐような行為なんじゃないかと思っているんですね。職業として残るかどうかとは別に、自分のためにやるものだと。


藤原

いやぁ、まさに同じことを考えていました。私は毎日何千文字も書いていますけど、考えが全部まとまってからアウトプットするんじゃないんですよ。書きながら考え、考えながら書くプロセスの中で、自分が進化したり新しい思考が生まれたりする。

安田

書かないと活性化しない部分が脳の中にあるんでしょうね。わからないことも書きながら「そういうことかもしれない」と気づくことってありますから。考えが先にあって文章にするんじゃなくて、文章にするから考えが生まれるという。


藤原

そうなんです。だからAIに完成品を作ってもらうと、そこに自分がいないから思考が磨かれない。読んでくださる方にも、知識として「ふーん」で終わるんじゃなくて、脳が揺さぶられるような文章というか。はっきり結論は出ないけど何かぐっと残る。それが人間らしさなのかなと。

安田

私も同感なんですけど、いずれAIは外付けの脳みそとして、記憶だけでなく思考も代行するようになるかもしれないなと思っていて。覚えなくても調べればいいという人が出てきているように、考えなくても答えをもらえばいいという人が必ず出てくる。


藤原

もう既にそういう人はいますよね。何か調べたいと思ったらまずAIに聞く。自分で考える前に答えをもらう習慣が当たり前になっていて、それが効率的だという感覚で生きている人は増えている気がします。

安田

そうなると人類は二極化していくんじゃないかと。考えることを選択する人と、考えることをやめた人。私が動画より音声に力を入れているのはまさにそこにあって。


藤原

なるほど、それは面白いですね。動画全盛の時代にあえて音声を選ぶ意味がそこにあると。

安田

ええ。音声って映像がないので、小説と映画の違いと同じで、自分の頭の中で情景を作っていかないといけない。難しい本を動画にするととてつもない長さになりますけど、文字や音声は自分の中で組み立てることができる。考えることを選択した人のメディアだと思うんです。


藤原

ふむふむ。つまり動画が主流になればなるほど、あえて音声やテキストを選ぶのは「考える側」の人間だと。

安田

そうそう。とはいえ「物語を自分の頭で映像化できない人」はこれから増えていくと思いますけどね。動画は見られるけど、本を読むことができないって人がもう出てきていますから。使わなければ脳は衰えますので。


藤原

確かにそうですね。ただ仕事のパフォーマンスだけで見れば、AIを使いこなす人の方が高いのかもしれない。企画書は数倍のスピードで作れるでしょうし。二極化しても、どちらにもそれぞれの役割があるのかもしれませんね。

安田

ああ、そうかもしれません。でも私は正直なところ、思考をしない人たちとは一緒に食事ができなくなりつつあるんですよ。その時間から何も得られなくて、どうにも間が持たないというか。

藤原

ああ、それは私も同じですね。多分向こうも同じことを思っていて、「そんな抽象的な話をしてどうするんだ」と感じているんでしょうけど。お互いに得るものがないと感じてしまう。

安田

会話がかみ合わなくなって、違う言語の外国人と話しているみたいになっていくんじゃないかと。逆に言えば、考えている外国人の方が話が合うようになるのかもしれない。言語ではなく思考で人類が分かれるというのが私の予想です。

藤原

いやぁ、ワクワクしますね。しかも私たちが生きているうちに答えが見えてくるわけで。考えることはやめられないし、そういう人と話していると本当に刺激的で楽しい。AIがあると答えを急いでしまうんでしょうけどね。

安田

AIが考えてくれますからね。答えのないものには価値がないと思ってしまう人も出てくるでしょう。でもだからこそ、自分で考えるという営みの価値は、むしろこれから上がっていくんじゃないかと思いますよ。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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