報酬としての仕事

仕事の報酬は仕事であるという言葉。
それはブラック企業の代名詞になってしまった。
じつに残念である。
私は仕事ほど楽しいものはないと思う。
同様に仕事を楽しんでいる人はたくさんいるだろう。

だが現代社会において仕事はもはや苦役なのである。
生きるため、食べていくために仕方なくやっている。
そう答える人が大多数だろう。
ここまで仕事をつまらなくした原因は会社にある。

経営者にとって利益を増やすゲームほど
面白いものはない。
だが社員にとって
これほどつまらないものはない。

決められた時間にタイムカードを押す。
指示された手順に従って作業をこなす。
上司の言うことをちゃんと聞いていれば
怒られずに給料が微増していく。
こんなものを楽しめというのは無理な話である。

それでも仕事を楽しんでこられたのは
報酬が魅力的だったからである。
出世すれば周りから羨望の眼差しで見られる。
部下をたくさん抱え、増えた報酬で家を建て、
最新の家電や自家用車も手に入れることができる。

素晴らしき我が人生。そういう時代もあった。
だが時代は変わってしまった。
もはや給料は増えない。出世するポストもない。
いや、そもそも、そのような報酬を人は求めていない。

いかにストレスなく仕事を終えるか。
残業もなく、上司との飲み会もなく、
休みはきちんと取れて、それなりに給料は増えていく。
部下などいらない。破格な報酬もいらない。
ゆとりを持って生活していくことがいちばん。

だが会社は給料を増やせない。
社員は疲れ果て希望を持てなくなっている。

競争が激化した現代では昔のような利益が出ない。
儲けを分配できるのはせいぜい上層部だけ。
全社員の給料を底上げしたら利益がなくなってしまう。
無理やりポストを作っても待遇が伴わない。
これで出世を目指せというほうが無理だ。

ではどうすればいいのか。
考えるべきことはひとつ。
いかにして報酬を増やさず社員の満足度を上げるか。
それを徹底的に考える。
行き着くのはあの言葉だ。

仕事の報酬は仕事である。
精神論ではなく事実として仕事の時間を快楽に変える。
これ以外に方法はない。

働く人の価値観は変化した。
ゆったりしたい。
だがそれだけではない。誰かの役に立ちたい。
人から必要とされたい。喜ばれたい。
人にとってそれは最大の快楽なのだ。

役に立った先に利益はある。利益の先に利益はない。
当たり前の価値観に回帰した会社が生き残っていく。

 

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